昨日の続きです。
で、今回のファントムのキャリエール役なんですが、
この人も、昨日長々と書いたサキホさんばりに無茶苦茶な人物です。
以下はキャリエール氏視点でのファントムのストーリーです。
(実際の舞台とは、時系列は違います)
18歳の時にオペラ座支配人の見習をしていたキャリ氏、オペラ座のダンサー・ベラドーヴァとであい、恋に落ちます。
若い二人は周りも見えずに情熱的に互いにのめり込んでいきました。
あるとき、キャリ氏は聞きました。
「どうして僕のことを愛してくれるんだい?」
すると、ベラちゃんはとっても上手に歌いました。
それはまるで天使の歌声のようにキャリ氏には聞こえました。
ベラちゃんは瞬く間にオペラ座の歌手として有名になります。
そしてしばらくして、ベラちゃんはキャリ氏に言いました。
「私、あなたの子を宿しているの、結婚してほしいの」
しかし、キャリ氏は重大なことをベラちゃんに言ってせんでした。それは、
キャリ氏、既に結婚してしたのです。
この舞台は19世紀末・フランスのお話、
当時、離婚・堕胎・不倫・自殺などは宗教的な理由から認められてはいません。
絶望したベラちゃんは神に祈りますが、救ってはもらえません。
ベラちゃんが行方知れずになり、キャリ氏は必死で探しました。
ある時、落ちぶれた姿で薬草を買っているベラちゃんを見つけました。
その薬草は多分自然に堕胎するための薬草か自殺用かだと思います。
しかし、薬草をむさぼってるベラちゃんを途中でキャリ氏が止め
子供は流れなかったのですが、化け物のような風体で生まれてきました。
この子供が主人公のファントム(エリック)です。
キャリ氏は驚いて目をそむけますが、ベラちゃんは歌うのです。
「私の歌声が生んだ天使」
ベラちゃんには化け物ではなく、本当にかわいい赤ちゃんにみえていたんです。
しかし、ベラちゃんは程なくして病気で死んでしまいます。
それからは、エリックはキャリ氏が引き取り育ててきました。
自分の職場のオペラ座の地下で、人目を忍んで男手一つでエリックを育てていたのです。
キャリ氏は罪の意識から自分が父親と名乗ることが出来ませんでした。
親戚の男性のような態度で、エリックには接していました。
エリックが8歳になったある日。
エリックは水たまりにうつった自分の顔を見てしまいます。
初めは海の化物かなんかだと思って驚きますが、すぐに気づきました。
「これ・・僕の顔だ」エリックは絶望して泣き叫びます。
見てられないキャリ氏は仮面をつくってやりました。
それから、毎晩のように地下から聞こえてくるエリックの泣き声。
それが「オペラ座の怪人伝説」の始まりなのです。

そしてエリックは成長。キャリ氏は今だ父親と名乗ることもできず
エリックの好き放題にさせています。
エリックは地下に降りてきた人間を簡単に殺してしまったりします。
キャリ氏は止めることもできません。
そして、エリックはクリスティーヌと出会い、
恋をしますが、クリスティーヌに顔を見せたら
(クリスティーヌがみせてくれといったんだけど)、
逃げられてしまったので絶望してしまいます。
クリスティーヌに、今までで唯一自分を愛してくれた
母の面影を重ねていたエリック。
そのクリスティーヌとの恋が壊れたことは、エリックにとって
大変なことなのです。
で、キャリ氏はクリスティーヌを追って地下から地上に出てきて
ファントムを探していた警官に撃たれて怪我をした
エリックを見つけます。地下に戻してやろうとするキャリ氏。
そこで、ようやくエリックに自分が父親だと名乗るのです。
エリックもなんとなくそうだったらいいなぁと思っていたけどたずねるのが怖かった。
ようやく実現した親と子の抱擁。
しかし、そんなことは長くは続かず、警官に二人は見つかってしまいます。
そしてエリックはあえなく御用。
生け捕りにされたエリックが叫びます。
「ジェラルド、自分を撃ってくれ、早く」
エリックは異形者。この時代では見世物にされてしまいます。
我が子をそんな目にはあわせられない。
キャリ氏は警部から銃を奪うと、一瞬の逡巡の後エリックを撃ちます。
そしてエリックは崩れ落ち、クリスティーヌの腕の中で最期を迎えるのでした。

どうですか?
時代背景が現代とは違うとはいえ、
旦那が自殺したらすぐに再婚して、なおかつ自分の子の父親が誰だかわかっていなかったサキホさんと
女の子孕ませといて既婚者だと告げていなかったキャリ氏。
脚本での描かれ方の滅茶苦茶度は甲乙つけがたいものがあります。
しかし、サキホさんが「ニューヨーク,ニューヨーク」1曲で
全てを取り返したように、キャリ氏も1曲で全て取り返します。
それは、エリックにようやく自分が父親だと告げるシーンの歌。
「You are my own」とかいう曲名だったと思います。
これは厳密にはエリックとのデュエット?なのですが
パパがどんなに君を愛していたか、ということを
せつせつと歌い上げる歌なのです。
やってることは結構非道なキャリ氏ですが、あの時代では仕方なかったこと、
自分なりの最善の方法で異形の息子を守ろうとしていたこと、
そして、何より息子をこの上もなく愛していたということ、
そういう感情がどーーんとあふれ出ていました。
そして、背負わされていた破綻したストーリーのひずみを
見事に感動に変えていたと思います。

脚本・潤色・演出が行き届かないところも板の上に
乗っている人間が責任を持っている。
そういうことをひしひしと感じたんです。

まだまだ続きますが、後日。

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